『銀色、遥か』は恋愛ゲームの完成形かもしれない【感想】

 

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※記事後半からネタバレ注意

 

評価

95点

タイトルにもある通り、私はこのゲームをプレイしていて美少女ゲーム、恋愛ゲームにおける1つの完成形なのかな」と感じた、素晴らしい出来であると思いました。

このゲームの素晴らしいところはいくつかあるのですがその1つとして、主人公が一般人であり、世間一般的に言われる「普通の人生」を過ごすだけのゲームであるところという点。

確かに主人公はイケメン、頭が良すぎ、人格者、というスペックで「こいつ優秀すぎだろ...」って場面が多々あるやべー奴なのですが、中学編のときには恋愛に対する悩みや子供っぽさを見せる言動、高校からは将来の夢や進路に悩み、社会人編では仕事に対する悩みや結婚に対する不安などと、誰もが成長していく中で当たり前に持つ悩みを持っているところが非常に丁寧に描写されていているおかげで共感しやすく、さらに主人公の悩みを変な事件に巻き込まれるとか血筋とか超能力みたいな現実離れしたもので解決させるのではなく、ヒロインや親などの身の回りの人に支えられながら悩みと向き合い成長していく描写が非常に丁寧で、まるで一人の普通の男の子の普通の人生をのぞき見しているようで、「俺も昔、、こんなことで悩んだこともあったよな~」と主人公の親の視点で見れるようなゲームでした。

恋愛ゲームの完成形であると思ったのは、この普通の人生を丁寧に書いてあるおかげでゲームの世界に”リアル感”が増してあるおかげで、主人公とヒロインが付き合う前のドキドキ感、高校に入ってからのイチャラブ描写、社会人編での夢を追い結婚する覚悟を決める瞬間、そのどの場面にも共感が生まれ、主人公と一緒に喜んだり、悩んでいるような錯覚に陥れる...つまり、普通の人生の物語だからこそ自分を物語に投影させやすく、主人公と一緒に悩んでいるような感覚が得られたり、プロポーズが成功したときとかは自分のことのようにうれしくなったりできるゲームでした。

恋愛ゲームはあくまでシミュレーションゲームであり、シミュレーションゲームとはプレイヤーがゲームの世界に入り込み様々な疑似体験をするゲームです。つまり恋愛シュミレーションの本来目指すところは”ヒロインとの恋愛を疑似体験する”だと思います。このゲームは日本の一般人が過ごす普通の人生にスポットを当てて、ヒロインと一緒に誰もが当たり前に持つ悩みを一緒に悩み、イベントを楽しみ、やがて結婚する...そんな誰もが想像できるテンプレのような幸せな人生を濃密に描いた作品でした。主人公の普通の人生に自分の人生を重ねながら見守っていく、その物語の中で生まれる多くの共感から主人公が別人から別人とは一概に言えないような感覚に陥れることで人生を疑似体験できる....だからこのゲームが恋愛シュミレーションの一つの完成形なのかなと感じました。

 

BGMも素晴らしく、ピアノを中心とした穏やかなBGMは物語の没入感を上げてくれました。中でもタイトル画面の曲が印象的でいつまでも銀色、遥かの世界に浸っていたくなるような素晴らしい曲です。

ゲーム自体は非常に長く、計測はしていないので正確な値はわかりませんが大体40~50時間は確実にかかりました。ただ文章が変な癖もなく非常に読みやすく、物語の展開のテンポもサクサクだったため飽きはこなかったです。

 

個人的には何の問題点もなくただただ素晴らしい!といいたいゲームなのですが、突っ込みどころが2か所あって、主人公の人間関係が中学編から社会人編までほぼ変わらない点が残念っちゃ残念だった。べスリールートだけはガラッと人間関係が変わるので新鮮味があっていいのですが、他のヒロインsのルートだと本当に変わらないので各ルートに主人公の新しい友達みたいなのが1人は欲しかった..

もう1つは男友達がいないこと、親友キャラはマジで欲しかった。てか主人公の周りが女性しかいないってどうなのよ。

 

未プレイの方へ

興味があるけどまだやっていない方は是非プレイしてほしいゲームです!

私はかなりの数のエロゲやギャルゲをやってきたつもりでしたが、銀色遥かをプレイして「まだこんなに新鮮な気持ちになれるゲームがあったんだ」と正直マンネリ気味だと思っていたエロゲのイメージをぶち壊されました。

このゲームは何回も使いまわされてきたテンプレのようなキャラやヒロインが多数派ですが、ただのテンプレでも作りこみようによってはこんなにも変わるんだと私に教えてくれた、そんなゲームです。

非常に長く、時間が大量に必要ですが、その分だけ感動が返ってくる素晴らしいゲームなので是非プレイしてほしいなと思います。

 

 

 

ここから個別ルートの感想のためネタバレ注意

 

 

 各ルート感想

・攻略順に記述していきます

 

ベスリー√

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どうでもいいけど高校編で英検準1級、大学はカナダへ留学と、このルートの主人公のスペックが限界突破しすぎていて笑う。ただ、このルートの主人公は他のルートとは違い「青臭さ」が結構描写されていて、見ていて歯がゆくなったり、逆にほっこりしたりと、完璧な人格者である主人公のイメージを薄めてくれるルートでもあったのがバランスが取れていて良い。

中学編はのお互い思いあっているけど日本とカナダの大きな距離が2人の邪魔をする展開はテンプレだけどやっぱり適度な絶望感があってたまりませんね。一回振られた後の主人公の行動の青臭さ含めて、中学編の中ではトップクラスに好きです。

高校編での印象に残った場面は、初Hするためにピルを買うためのお金を2人で溜める場面が結構衝撃的だった。エロゲは中田氏しまっくても妊娠しない不思議な世界だと思っていたけど、ここまでしっかりと避妊を意識して行動するゲームは今までなかったため「このゲームは一味違うな」と感じられる一幕でした。(ほかのルートだと避妊を全くしていないからちょっとがっかり)

アフター編では唯一主人公の周りの人間がガラリと変化し、ついに待望の男友達も登場。さすがセンターヒロインと言わざるを得ない高待遇。日本での同棲生活をするときのベスリーのビザ申請が細かく描写されている点などは、銀色遥かのゲームの作りこみの高さを感じられる一幕だと思います。こういう実際にしなければいけない手続きなどの細かい描写の積み重ねがあるからこそ没入感の高い素晴らしいゲームになっているんだなあと感じます。

自分はベスリーに釣られてこのゲームを購入したため、イチャラブ描写も最大限に楽しめ、最後の結婚シーン、その後の子供が生まれ家族になった主人公一家の幸せな描写を見て、物語が終わった時は寂しさがやばかったです。

 

椛√

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ストーリーとか置いておいて、ヒロインの中だと一番かわいい。やっぱ同級生キャラこそ志向。

中学編でのテレビ塔前で椛と主人公がの心の中の暗い感情をお互いにさらけ出すシーンは本当に素晴らしいの一言。子供っぽさを見せつつこれからの2人の成長を予感させる銀色遥か屈指の感動シーン。

高校編では他のヒロイン√よりもバカップル成分が高く、椛推しの私には非常に満足なストーリーでした。中学の時の約束が2人に大きな影響を及ぼしているのと、2人だけがお互いの内面を知っているために気が付く悩みなど、バカップルをしているだけではない、2人の年季の長さを感じられる描写が非常に好き。

このルートのもう一人のキーパーソンである榊も滅茶苦茶いいキャラしていて、ワンルーム学級の6人とは別に、椛と主人公と榊の3人という別のグループができているのも新鮮でいい。

椛√の社会人編の主人公は一番好きかもしれない。主人公が自分のやりたいことを取るか椛を支えるために今の仕事を続けるかと、非常に難しい疑問を抱えるあたりが、本当に共感できます...結果は夢を取ることになるけどそこでも主人公が積み重ねてきた物が報われる展開もほんと泣きそうになる。

このルートは他のルートよりも主人公とヒロインの精神面での成長が大きく感じられて、社会人編で中学の時のことを振り返るシーンなどはこっちまで「ああ、懐かしいなあ」と感じられて子供から大人になることの時間の長さを感じさせてくれました。

あと全体的にHシーンがエロかったです。

 

雪月√

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ちっぱい枠、正直このルートだと最初っからお兄ちゃん予備じゃなくて雪兎さん呼びで通してほしかったです。

中学編では兄弟物のテンプレみたいな話で特に新鮮味はなかったなあと、高校編ではイチャラブが他より控えめで雪月の母親のエピソードやパティシエの夢へのきっかけをつかむフラグ立てのストーリーで面白いんだけど他のルートほど夢中にはなれなかった。

しかし社会人編では面白さが激変、これでもかというほどのイチャラブ描写と2人の夢が妄想から現実に変化していく様は見ていて飽きがこない。

イタリアでのパティシエコンテストの主人公の乱入がこっぱずかしいけど激熱展開で滅茶苦茶好きです。その後に周りからいじられて恥ずかしがる所もワンセット。

ラストに2人の夢がかなってケーキ屋をオープンするときには、2人の今までの積み重ねがようやく報われたという実感が沸き上がってきて心が温かくなる、そんな物語でした。

 

雛多√

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もう一人の主人公といっても良いほどの、ハイスペックギャル。キャラ紹介の時の2つ名がエターナルドリーマーと1人だけ中二病みたいになってる主人公感。

物語的には...ちょっと他のルートには見劣りする感は否めない。ただイチャラブ描写に関しては一番濃厚で雛推しの人にはたまらない内容になっていると思う。

主人公が獣医と結構珍しい職業に就くのが面白くて、獣医とアクセサリーショップと一見関係のない2人の夢が混ざり合っていく展開はよくできているなーと思いました。

ハルを拾ったときに主人公父が失ったときの悲しみを受け入れることを描写していたのに、結局最後までハルが死ななかったため、生き物の命の尊さとかを取り入れたりしたらもっと面白かったかも?

ED曲である”ヒマワリ”は銀色、遥かだけではなく、エロゲソングの中でも屈指の名曲。歌詞に向日葵という単語が無くてもヒマワリを連想させるような歌詞と、本編の雛多の心情がマッチしていて素晴らしい。

 


銀色、遥か (Gin'iro Haruka) OST - ヒマワリ (Himawari) FULL [Lyrics Sub] +Eng

 

個人的ウェディングドレス姿が似合うヒロインNo1

 

瑞羽√

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めっちゃ感動した

このルートやっちゃうと主人公の相手は瑞ねえしかありえないと考えちゃうから最後にやってよかったです。やっぱり幼馴染は報われるべき

他ルートとは違い個別√の中にもいくつか選択肢が用意されていたり、専用BGMが多かったりとセンターヒロインのベスリーより優遇されているあたり、やはり真のヒロインは瑞ねえだったのだろう。

中学編での「お前ら早く付き合えよ」感はやっぱりいいですね、ニヤニヤが止まりませんでした。これぞ恋愛ゲームの醍醐味。

瑞ねえのライバルであるアリサがここと社会人編後半でしか登場しませんが少ない登場機会のおかげで逆に存在感が大きくなっていて、この強大な敵をいかに倒すのかと次の展開をワクワクさせるような刺激的な導入でした。

高校編では、他ルートで毎回やってたように瑞ねえが靭帯損傷、ここで靭帯やるのはどの世界線でも変わらないのか....ただ他ルートとは違い主人公が瑞ねえのサポートにつきっきりになることで、普段大人っぽく余裕のある瑞羽さんの弱さを見ることができ、「これ他ルート行っちゃダメだろ..」と思いました。

2人きりの時の瑞みえの甘えん坊モードが最っっ高にかわいい。そのことを周りにいじられて恥ずかしがるのもの見ていてめちゃくちゃニヤニヤできて最高。風音さんキャラにマッチしすぎです。

社会人編ではついにオリンピックの舞台へ、主人公と婚約し、トライカップの時の演技を超える力を身に着けた瑞羽さんが無事に金メダルを取ってEDへ、まさかオリンピックの演技が始まると同時にEDが流れると思わなかったので正直びっくり。

主人公のプロポーズかっこよすぎです、ウェディングドレスを着ると婚期が逃げるから婚約する、この思い切りの良さが雪兎さんのイケメンたる理由。

アリサの描写がもう少し欲しかったなあと、「なぜ瑞羽は強い」という理由について本年と直接対話するシーンとか欲しかったです。あとオリンピック後の活動も気になる。

スケートリンクを銀色の世界と比喩したり、遥か彼方まで飛び立つ瑞羽さんのイメージは劇中でも語られているあたり、このルートをやるまでは”銀色、遥か”の意味を”遥かまで続く雪景色”ととらえていたのですが、瑞羽ルートだと”銀色の世界を遥かまで飛ぶ鳥”という意味でも捉えられるあたり、やっぱ特別な扱いだなあと思います。

ヒロインの可愛さもシナリオも最高の出来で、いつまでも終わらないでほしい”銀色、遥か”の世界を締めくくるには最高のヒロインでした。

 

まとめ

この記事はゲームを終わった次の日に書いたのですが、正直まだロスが残っていて心にぽっかり穴が開いた感じです(笑)。夢の季節を聴くたびにまた泣きそうになる...

それほど自分が銀色、遥かの世界を楽しめていたのだと思うと、このゲームをプレイしてよかったなあと思いました。

次は星織ユメミライでもやってみようかな...