【感想】普通の人が読む『さくら、もゆ』
さくら、もゆ 評価
点数:80点
最大瞬間風速だけなら100点つけてもいいぐらい感動できる、特にクロルート最後のあさひさんとクロの対談するシーンが神。
ただし、よくも悪くもクロルートありきな物語で、しかもそこにたどり着くまでに40時間はかかるという絶望的に長い文章、複雑すぎる展開と正直心が折れそうだった。
そのため考察しがいがあるゲームで、自分の中の情報を整理しながら読んでいくとメモを取らなくてもハルルートあたりまでは理解できると思う。
ただクロルートに入るとそれまでの膨大な伏線回収と様々な世界線がバラバラな時間軸で語られるので、正直頭の中だけで物語を理解することは自分の頭では不可能でした。まあなんとなくやりたいことがわかるのでそれでよしとします。
誰もがつらい現実を乗り越える力を持っていることを教えてくれる、やさしいメッセージが込められた作品だったなと思っています。
ですが正直に言いますと、物語の格でありテーマとも言ってもいい、「自己犠牲の精神」はそんなに好きじゃないかなと。
「さくら、もゆ」にはたくさんの現実に打ちのめされた子供たちが登場し、その子供たちが苦しみや後悔から自分を許して前を向くための物語です。
そして自分が考える「さくら、もゆ」からのメッセージは「つらい現実を乗り越える力を持っていること」、「誰かがあなたを支えてくれていること」だと考えています。ゆえに自分は最終的に子供たちの逃げ場である”夜”を破壊して”自分の力で”現実に向き合っていくストーリーかなと考えていました。(予想は外れて、予想以上の超展開を繰り広げられました)
しかし主人公たちは自分を助けることは諦め、「あいつを助けるために犠牲になる」というある種”逃げるための自己犠牲”をした結果、最終的には夜の魔法といいう裏ルートに頼りまくり、お互いがお互いを助けあうために自己犠牲を繰り返し足を引っ張っていたとも解釈できるからです。
まあ端的に言うと「さくら、もゆ」に共感できないのは「自分の苦しみから解放され(自分の命を軽視して)、大切な人"も"助けられる選択肢としての自己犠牲」をどのキャラも取っていたのが気に食わなかったってことです。
あとは「誰にも必要とされていない」という価値観を小学生ぐらいに持っているとしても、成長していく時間の中での様々な出会いや物語によって、価値観はコロコロ変わっていく物であると自分は考えているので、子供のころの悪夢が一生続いていくと示唆しているストーリーに違和感があるっていうのもあります。
ここまで、何か酷評しちゃいましたけど自分は「さくら、もゆ」という作品が嫌いではないです。むしろ好きです。
尺は膨大になってしまったけど様々な時間軸、並行世界を丁寧に描き切ったことも素晴らしいし、CGや背景で良くあんな幻想的で美しい世界を描けたなーと、素直に凄いと思う。
そして膨大なリアル時間とゲーム内時間を過ごした先にある、あの終わり方はめっちゃずるい、マジでずっとニヤニヤしてました(笑)
自分はキャラの掛け合いや苦悩への向き合い方という部分より、ストーリーの展開、伏線回収が面白い作品としての「さくら、もゆ」が好きなんだなと思いました。